大きな胸に憧れがあり、豊胸の手術を受けてみたいと考えている人も多いでしょう。
しかし、術後に残る傷跡やその他のトラブルが心配で豊胸に踏み切れないという場合も少なくありません。
豊胸しても傷跡を残したくないのであれば、メスによる切開を行わない豊胸術を活用するのが賢明です。
また、切開を行わない豊胸術にも持続性の高いものと持続性の低いものがあります。
今回は、豊胸術の種類とそれぞれの術後の傷跡やリスクについて紹介していきます。
メスを使う豊胸術とは?
シリコン製のバッグを挿入することで豊胸するシリコンバッグ豊胸は、メスによる切開が必ず行われる豊胸術です。
主に、手術後にはっきりとしたバストアップ効果を感じたいという人に人気があります。
挿入するバッグにはさまざまな形や質感、大きさのものがあり、豊胸する人の胸の状態や希望に応じて使い分けられます。
例えば、もともとボリュームがない人が大きなバストアップを希望している場合は円型のバッグが使われるでしょう。
また、もともとボリュームがある人がさらに大きくしたいと考えているのであれば涙型のバッグが適しています。
それぞれの形や質感にはメリットとデメリットがあります。
質感がなめらかなタイプのバッグは被膜拘縮が起こるリスクが高い一方で、大きく皮膚を切開する必要はありません。
質感がざらざらとしたタイプのバッグは切開する皮膚の幅が大きくなりますが、被膜拘縮は起こりにくいというメリットがあります。
なお、被膜拘縮とは挿入したバッグの周囲にできた被膜が縮み、乳房が硬くなって変形してしまう症状のことです。
シリコンバッグは免疫機能にとっては体内に侵入した異物にすぎないため、バッグの周囲には体を守るための被膜が必ず作られます。
この被膜が異常をきたすことで、シリコンバッグの形が外見からもわかるようになってしまうことがあるのです。
挿入するバッグのサイズや質感などにもよりますが、シリコンバッグ豊胸では4~5cm程度の切開が必要になるケースが多くなります。
切開する位置によって、主に3通りの手術方法があります。1つ目が腋窩(えきか)法で、脇の下のシワに沿うように皮膚を切り開く方法です。
日本では胸に傷跡を残したくないと考えている人が多く、シリコンバッグ豊胸を行う際に9割以上の人が腋窩法を選択しているといわれています。
胸に傷跡が残らず、脇の下の傷跡もシワに同化して徐々に目立たなくなることが腋窩法のメリットです。
2つ目の方法が乳房下法です。この方法では、乳房の下にある溝に沿って切開を行い、シリコンバッグを挿入することになります。
腋窩法に比べると出血が止めやすいというメリットがあるため、乳房の下に傷跡が残っても構わないのであればこの方法が適しているでしょう。
3つ目に挙げられるのが乳輪周囲切開法です。乳輪の縁の下側を切開するという方法で、かつては広く行われていました。
しかし、どうしても傷跡が目立ちやすくなってしまうため、現在ではほとんど行われていません。
メスを使わない豊胸術とは?
メスを使わない豊胸術としては2つの方法があります。
1つ目がヒアルロン酸豊胸で、切開を行わない豊胸術としては代表的な方法です。
ヒアルロン酸豊胸では、局所麻酔を施したうえで注射器を使って胸にヒアルロン酸を注入することになります。
注射器によって皮膚に穴を開けるのでまったく傷がつかないとはいえませんが、メスによる切開の傷跡と比較すれば差は歴然です。
ムコ多糖類の一種であるヒアルロン酸はもともと体内に存在している成分なので、アレルギーなどの副作用を心配する必要はありません。
また、15~30分程度と短い時間で施術が完了するため、プチ整形ならぬプチ豊胸として人気を集めています。
このように、ヒアルロン酸豊胸は気軽にバストアップしたい人に適した豊胸術だといえるでしょう。
胸にメスを使わない豊胸術として、2つ目に挙げられるのは脂肪注入を用いた豊胸です。
脂肪注入法では、胸以外の体の部位の不要な脂肪を吸引して胸に注入するという方法で豊胸を行います。
余分な脂肪がついている体の部位から脂肪を吸引する際、カニューレと呼ばれる極細の管を挿入するために皮膚の一部を切開する必要があります。
しかし、数mm程度の切開ですむので傷跡が残ることはあまり心配しなくてもよいでしょう。また、おへその中や足のつけ根の部分など、傷跡が残ったとしても目立たない部分を切開するのが一般的です。
カニューレで吸引した脂肪は、生理食塩水で洗浄したうえで状態のよいものを選別することになります。
その後、選別した脂肪を注射器に移し替えて胸の乳腺層や筋肉層に注入していくのです。注入された脂肪のうち、生着したものはそのまま胸の一部として残ります。
生着とは、細胞に毛細血管が結びついて組織に固定された状態のことです。体内に存在するあらゆる脂肪細胞は結びついている毛細血管から酸素と栄養分を受け取っています。
すなわち、吸引によって一度血管から分離された脂肪細胞は、注入された後でもう一度血管と結びつく必要があるのです。
この生着がうまくいけば再び酸素と栄養分が受け取れるようになり、脂肪が体内に残ります。
生着できなかった脂肪は自然に吸収され、体外に排出されるか胸以外の場所に蓄えられることになるでしょう。
注入された脂肪の生着率には個人差がありますが、一般的にはおよそ半分の脂肪が生着して胸の一部になるといわれています。
脂肪注入による豊胸が向いている人としては、シリコンバッグに違和感を感じる人や胸以外の部位の脂肪をなくしたい人などが挙げられるでしょう。
メスを使う手術の傷跡は数センチだが・・・
メスを使う手術では数センチの傷跡が残るということは先述のとおりですが、日本人のような有色人種の場合は傷跡が目立ちやすい傾向があります。
これは、豊胸術を受ける際に日本人の多くが傷跡を気にして目立たない脇の下の切開を希望する理由の一つでもあるでしょう。
術後の傷跡は脇の下のシワと同化して徐々に目立たなくなってはいくものの、しばらくのあいだはくっきりと残ることになります。
また、瘢痕(はんこん)が残りやすい体質の人は細心の注意が必要です。
術後に後悔することにならないように、切開する位置や長さなどは事前にしっかりと確認しておきましょう。
シリコン豊胸による術後のリスクとは
シリコン豊胸の術後に生じるリスクとして、まずはシリコンバッグがずれてしまうことが挙げられます。
これは、切開の際にバッグを入れるためのスペースを作りすぎることで起こります。反対に、スペースが狭すぎてバッグがよじれ、胸にひだのようなシワができてしまう現象がリッピングです。
また、バッグ周囲の炎症によって細胞が死に、死んだ細胞がカルシウムと結合することで起こる石灰化にも注意が必要です。
さらに、この炎症は繊維芽細胞の活性化を誘発します。その結果、バッグの周囲に繊維質の被膜ができることで先述の被膜拘縮が起こる恐れもあるのです。
基本的に、シリコン豊胸で使われるシリコンバッグは工場で画一的に生産されています。
そのため、挿入したバッグが体に合うかどうかは個人差があり、場合によっては左右の乳房の形が違うといったようなトラブルが起こってしまうのです。
また、シリコンバッグはある程度の硬さがあるため、完全に体になじむことはありません。
シリコンで豊胸した胸で谷間を作ろうとしても、バッグの硬さのせいで胸を自然に内側に寄せることができない場合があります。
シリコン豊胸によるデメリットとは
シリコン豊胸によって生じるデメリットとして、挿入したシリコンバッグの冷たさが伝わるということがあります。
本来の胸には血が通っているので一定の温度が保たれていますが、人工物であるシリコンバッグを挿入することで胸の温度が下がります。
その結果、冬場に胸の冷たさを感じたり、触った相手に冷たさを指摘されたりするといったようなことが起こるのです。
また、仰向けに寝たときに胸が不自然に盛り上がるようになるため、人目が気になってリラックスできなくなる場合もあるでしょう。
さらに、レントゲン検査でバッグの影が映ってしまう、バッグが破裂するリスクからマンモグラフィーが受けられなくなるなどのデメリットも生じるのです。
大胸筋の下にシリコンバッグを挿入する方法のことを大胸筋下法と呼びます。
この方法でシリコン豊胸を行った場合、バッグから受ける長年の圧力によって、大胸筋が萎縮したり、肋骨の圧迫骨折が起こったりする恐れがあります。
このような事故を防ぐためにも、シリコンバッグは10年程度で取り換える必要があるということもデメリットの一つとなっています。
シリコン豊胸を行う場合は、傷跡のことだけではなく、これらのリスクがあるということもしっかりと認識しておく必要があります。
傷跡が気にならない豊胸もある!
シリコン豊胸で傷跡を残したくないという人は、傷跡が気にならない豊胸術を選ぶとよいでしょう。
まず、ヒアルロン酸注入はメスを使わないため、安静にしていなければならない期間もほとんどありません。
注入にかかる時間についても、片側で5分程度、両側でも10分程度で終わります。
このように、短時間で施術が行えることがヒアルロン酸豊胸のメリットだといえるでしょう。デメリットとしては、バストアップ効果の持続性が低いことが挙げられます。
一方、脂肪注入法では脂肪吸引と脂肪注入の2つの過程によって施術が行われます。
脂肪吸引の過程では脂肪細胞のみを確実に吸引し、血管や神経が傷つけられることはありません。
また、脂肪吸引部位の切開についても2~3mmですむので出血量は非常に少なく、むくみや痛みも小さく抑えられます。
脂肪注入法の大きなメリットとして、豊胸のついでにサイズダウンしたい部分の脂肪を吸引できることが挙げられるでしょう。
そのうえでバストに脂肪を注入するので、バランスの取れたプロポーションが実現できるのです。
バストアップ効果の持続性も高く、シリコン豊胸のような術後のデメリットはほとんどありません。
脂肪注入なら傷もリスクも少ない
メスを使って行われるシリコン豊胸では、術後の傷跡のリスクやトラブルが気になるという人も多くいます。
また、ヒアルロン酸豊胸は短期間でバストアップができるうえに傷跡も気になりませんが、持続性が低いという欠点があります。
しかし、脂肪注入による豊胸であれば傷跡が残ることはなく、術後のリスクもほとんどありません。